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京町家が文化と出会うためのプラットフォームに!?路地を抜けた先に広がる新たな発見!

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京町家の外観

京都市下京区石不動之町に京町家が集まる路地「もみじの小路こみち」がある。通りに面する細い路地を潜り抜けたその先には、京町家に囲まれた空間が広がり、外の空間とは一線を画す景色が広がっています。この「もみじの小路」の管理人であり、その中で「Garden Lab」を運営するウォーリン ドゥルー ケントさんと、「Garden Lab」に様々なTeaを楽しめる「O5 Kyoto Rare Tea Bar」の運営委託をしている田村けいさんに、京町家を活用することになったきっかけや思いをお話いただきました。

京町家のプロフィール

改修された築100年超の京町家9軒で構成される「もみじの小路」。中庭では、その名称の元となった紅葉の木が存在感を放つ。その中は、「Garden Lab」や「O5 Kyoto Rare Tea Bar」、コーヒーショップ、飲食店、建築士事務所など多様な活用がされている京町家が建ち並ぶ複合施設となっている。

ウォーリン ドゥルー ケントさんのプロフィール

カナダ出身。もみじの小路管理人。Garden Lab株式会社 代表。「Garden Lab」としてコアワーキングスペース及びイベント・宿泊施設、「O5 Kyoto Rare Tea Bar」を運営。学生時代には京都大学大学院に編入し、「京町家と庭」を研究。

>Garden Lab/O5 Kyoto Rare Tea Bar(外部サイトに移動します)

田村 啓さんのプロフィール

株式会社TABIKYO JAPAN 代表取締役。O5 TEA JAPAN 代表取締役。世界のスタンダードを基準として地域の課題を再編集し、世界に発信するなど、課題解決に取り組んでいる株式会社TABIKYO JAPAN 代表を務めながら、カナダのバンクーバーにある「Tea Bar」(お茶の卸売業)のブランドの日本法人であるO5 TEA JAPAN 代表も務める。

>TABIKYO JAPAN.(外部サイトに移動します)

日本の魅力を世界に伝える架け橋に

田村さんは、日本の文化的魅力や地域に根付いた独自文化の楽しさを世界目線で伝えていくことにフォーカスし、その架け橋となるべく、日本全国で多岐に渡って活動されています。
長い期間海外で活動し、多くの国を見て来た中で、日本の魅力がしっかりと伝わっていなかったり、誤解されてしまっている状況がたくさんあったといいます。
「外国人が日本のことを知らないから分からないのは当たり前。それを解決するための情報源が必要。実際に日本に来てもらって、日本人の本物の丁寧さに触れてもらうと、その独特な魅力に気付いてもらえる。日本の魅力の中でも、特に職人の仕事の繊細さや丁寧さを守っていかなければならない」と田村さん。

「京町家×お茶」が生み出すエキゾチックな魅力

農業大国である日本において、田村さんが日本全国各地の地域課題に携わっている中で、お茶に触れる機会が多かったといいます。カナダのバンクーバーでお茶の卸売業をしている「O5 Rare Tea Bar」では、お客様の多くがお茶のファンで、お茶を楽しむと同時に東洋にも興味がある。田村さんは、お茶に興味を持つ人が世界的にも増えていることを実感し、日本のお茶産業の底上げをするために、「O5 Rare Tea Bar」の仕組みを日本でも展開しようと思っていた2022年末に、ウォーリンさんに「O5 Rare Tea Bar」の代表Pedro Villalon氏と会社のコンセプトを紹介し、「Garden Lab」で「O5 Kyoto Rare Tea Bar」をすること(運営主体は「Garden Lab」)を提案しました。ちょうど「Garden Lab」の交流スペースの用途を見直していたウォーリンさんと、お茶事業の展開先を探す田村さんにとって、ベストタイミングなお話だったのです。決して場所はどこでも良いわけではなかったとのことですが、ウォーリンさんに京町家で「Tea Bar」をする提案をした理由を田村さんは次のように話します。
「彼(ウォーリンさん)が維持管理する“もみじの小路”の京町家の空間は、職人さんのこだわりや彼自身の丁寧さ、京町家への理解の深さが反映され、日本人である私以上に彼が日本人であるという部分が見えてきた。“京都の文化”と“お茶”という組み合わせは、日本に訪れる外国人にとって非常にエキゾチックなものとなる。この空間を訪れてくれた人たちには、お茶を楽しんでもらえると同時に、京町家が持つ多くの魅力を学んで帰ってくれるに違いないと思った。」

京町家が文化と出会うためのプラットフォームに

田村さんにとって、訪れてくれたお客さんの言葉で印象に残るものがあります。それは、よく言っていただける「お茶がおいしかった」という言葉よりも、「すごく勉強になった」「たくさんのことを学んだ」という言葉です。このとき、外国人にとって京町家が“文化と出会うためのプラットフォーム”になっていることを強く実感するそうです。日本の魅力を世界に伝える活動をしている田村さんだからこそ、お客様のこの言葉を聞くときが、この活動をやっていて良かったと感じる瞬間でもあります。

「I am in kyoto」を

今、世界中から多くの人々が観光などで京都を訪れています。それは、京町家をはじめとした京都の文化、つまり「I am in kyoto.」を感じたいから来ていると田村さんは分析します。
「世界中の人々が目を向けている日本の魅力、京都の魅力に、日本人自身にも今一度気付いて欲しい。」
それが、日本の魅力を世界に伝える活動に日々取り組んでいる田村さんが目指す最終的な目的です。

京町家を国内外の人が交流できるすばらしい空間に

ウォーリンさんは、もみじの小路の管理人をしながら、自身ももみじの小路内の築100年を超える京町家でコアワーキングスペース及びイベント・宿泊施設である「Garden Lab」を運営しています。この「Garden Lab」は、国内外の多くの方に来てもらって、京町家のすばらしい空間で交流ができるようにという目的で立ち上げられました。
カナダ出身のウォーリンさんは、学生時代に、京都大学大学院で京町家の研究をしていました。その中で、京町家の“境界線の曖昧さ”に惹かれたそうです。「カナダは分厚い壁の家がほとんどで、家の内側と外側の境界線がはっきりしている。一方、京町家は、例えば、暖簾が壁の役割を果たしていたり、内側であり外側でもあるような土間の空間があったり、縁側や通り庭、奥庭、坪庭など空間の豊富性もすばらしい。」とウォーリンさん。そのような環境で“暮らし”と“仕事”をどちらもやってみたいという気持ちがあって、「Garden Lab」の前身となる会社を立ち上げました。そして、もっと色々な人にこのような文化体験をして欲しいと思うようになったそうです。

もみじの小路との出会い

「Garden Lab」の前身の会社時代に、オフィス兼住居として借りていた京町家のオーナーさんから、40年程空き家だった京町家(現在のもみじの小路)を改修するという話を聞き、当時大学院の研究生だったウォーリンさんも何かお手伝いするために庭師の紹介や設計会議への参加など、自分にできることを協力していました。その中で、もみじの小路のように複数の京町家で共用する庭がある場合はそれを維持管理する人の存在が必要となるため、自ら手を挙げて、もみじの小路の管理人を引き受けたそうです。「もみじの小路の京町家を活用して、京町家で働くという環境を色々な人に提供しながら、管理人もできたら良いという思いがあった。」と語るウォーリンさん。

路地を抜けた先に広がる感動

もみじの小路で特徴的な部分は、きれいな紅葉の木がある大きな中庭があり、複数の京町家が同じ中庭を共用しているという点です。もちろん、共用しているからこそ、そこに入るテナント同士の関係やルールづくりも大切になってきます。
もみじの小路には、外の通りからは想像できないすばらしい空間が路地を抜けた先に広がっていて、中庭を訪れてくれたお客様からは毎回のように驚きと感動のお声をいただけるそうです。大きな中庭だけでなく、きれいに改修された京町家だからこそ感じる新しさと、伝統工法や土壁などから感じる古さが融合したこの空間を気に入ってくれる人は多く、「我々も、このような感動を感じてもらうためにここにいる。」とウォーリンさんは話します。

また来たいと思ってもらえる京都に

多くの建物がどこの国や場所に建っていてもおかしくないような現代ですが、京町家は京都にしかありません。京町家がなくなると、京都の重要な文化が失われてしまいます。ウォーリンさんはこの危機感について次のように語ります。
「京都を訪れる観光客の多くは清水寺など名所巡りが主な目的だが、『また京都に来たい』と思ってもらうためには、『ある日ふと、あの路地に入ってみて、すごく良いお店があったよね』というような会話ができるような街並みである必要がある。日本人でも外国人でも、観光客が京都に来て、特に記憶や印象に残るのは、その街を探検的に旅してみて、何か感動を見つけたという発見。この街並みがなくなると、同時にその発見もなくなり、『また京都に来たい』と思ってもらえなくなる。一度名所を巡って二度目は来てもらえないような京都にならないためにも、是非、京町家を残して欲しいと思っている。」

柔軟性のあるすばらしい建築

ウォーリンさんは、実際に京町家を併用住宅として活用し、1階部分をお店、2階部分を住居にしていた経験もあるそうです。そこには、住みやすさと働きやすさの両方があったといいます。
「"両方できる"というのは、海外の家は、ゾーニング的に難しいと感じる部分もあるが、ネクストユーズができる京町家は、スタートアップ企業や在宅ワークでのビジネスを展開したい人にはぴったりの建築だと思う。長屋でも一軒家でも、用途に応じて柔軟に対応できるすばらしい建築。それが京町家。」
「具体的な活用方法としては、何かを作る工房やパソコン仕事にも向いている。本当に色々な活用方法が考えられ、改修することで進化できる。それが京町家のすばらしいところだと思う。」
そして最後にこう語ってくれました。「Limit is your imagination.(想像できるものなら、何でも可能。すべてはあなたの想像力次第。)」
ーーこれまで京町家を研究しながら、実際に自身でも活用してきたウォーリンさんだからこそ語れる京町家のすばらしさがインタビューの中で溢れていました。