京町家が地域との交流の舞台に!子どもも大人もふらりと遊びに来る、学生達の活躍の場

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京町家の庭での長谷川さんの写真

京都には、京町家をキャンパスとする大学があります。京都ならではのユニークな取組ですが、その代表的な事例とも言えるのが龍谷大学の深草町家キャンパスです。2013年のオープン以来、学生達が自ら活動する場として常に賑わいを見せてきました。京町家を管理する長谷川裕晃さんに、その取組についてお聞きしました。

京町家のプロフィール

龍谷大学が2013年に開いた京町家を舞台としたキャンパス。地域社会と連携を図りながら、学生が主体的に利活用する地域のコミュニケーションの場となっている。景観重要建造物。「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」の保存建築物第1号。京町家条例に基づく個別指定京町家。

>景観重要建造物について
>歴史的建築物の保存活用(建築基準法の適用除外)とは
>京町家条例に基づく指定制度

江戸時代の趣はそのままに、キャンパスとして再生

龍谷大学深草町家キャンパスは江戸時代に建てられた京町家で、元々は呉服商が営まれていました。伏見街道と呼ばれるかつてのメインストリート・本町通沿いに位置し、どっしりとした間口の広さが印象的。深草のまちを南北に走る本町通沿いには、現在でも歴史深い趣のある京町家が点在しますが、深草町家キャンパスはその代表的な建築の一つとも言えます。

大きな出格子が美しい深草町家キャンパス

つし2階(中2階)建ての主屋、離れ、中庭、土蔵からなる京町家で、出格子や通りひさし虫籠窓むしこまど、おくどさん(かまど)など、京町家ならではの特徴を備えています。しかしながら、龍谷大学がキャンパスとする前は長らく空き家の状態で、老朽化も進んでいました。所有者は京町家を残したい気持ちはあったものの、借り手が見つからない状態が続いていましたが、2011年に京都市伏見区役所深草支所から龍谷大学に声が掛かったことをきっかけに大学で検討し、このすばらしい町家を保全できるならと地域と学生の交流拠点として活用することが決定。所有者によって2年かけて改修が行われ、深草町家キャンパスとして生まれ変わりました。

当時の趣を残しながら改修した火袋も京町家の特徴の一つ

現在は、龍谷大学の学生が京町家の特徴を存分にいかしながら、地域の人達との交流の場としてイベントなどの企画・運営を行っています。

学生達が主に活動の拠点とする1階のお座敷

学生達と地域の人々のコミュニケーションの場に

深草町家キャンパスの最大の特徴は、龍谷大学の学生であれば、自由に利用することができ、授業を行う「教室」としての役割のみならず、多様な使われ方がされていること。ゼミなどの授業で使用されるだけではなく、サークル活動や趣味、地域イベントで活用されており、また、「京まちや七彩なないろコミュニティ」という深草町家キャンパスを拠点に地域活動に取り組む学生団体も組織されています。ここには学生が自らイベントを企画・運営する環境が整っており、学生達が責任感や企画力、コミュニケーション能力を高める場になっているそうです。ちなみに、企画された夏祭りやハロウィンなど、地域の人と一緒に楽しめるイベントは大変人気なのだとか。

お座敷の奥には中庭があり、更に奥には茶室や蔵がある

地域との関わりは、もちろんはじめから順調であったわけではなく、キャンパスのオープン当初は地域の人達の反応もあまりなく、利用する学生も少なかったそう。しかしながら、学生自らが「どうしたら興味を持ってもらえるか」など地域との関わりについて真剣に考え、大人から子どもまで地域の人が気軽に参加しやすいイベントを企画し実践し続けたことで、次第に地域の人達からも「今度こういったイベントを行うので、学生さんにも手伝ってもらえないか」などと相談を持ちかけられることも増えていきました。こうしてキャンパスがコミュニケーションの場として機能するようになっていったのです。

地域の子ども達と一緒に行う「うどん教室」は大人気

また、管理人である長谷川さんが常駐していることや、普通の大学キャンパスと違い京町家ということも大きく、地域の人も気軽に立ち寄りやすい環境になっています。学校帰りの小学生が、ふらりと立ち寄っておしゃべりをして帰っていくこともあるのだとか。

活動を通して学生達が成長できる京町家

地域の人達と学生の交流の場所であること以外にも、キャンパスとしての京町家の利点は多く、例えば、昔ながら人々の暮らしの知恵を学べたり、京都ならではの住宅文化についても体感できたりと、留学生はもちろん、日本の学生にとっても貴重な体験をすることができます。お茶室もあるので、時には茶道部の学生が地域の方を招いてお茶会を開くことも。

中庭の奥にある茶室。お茶会は地域の人にも評判

また、京町家の奥にある畑で野菜を育てて収穫し、おくどさんで調理して味わうという食育体験なども行っています。さらには、毎週木曜日には教員を目指す文学部の学生達が、中学生に受験勉強を教える寺子屋のような取組も。受験を控える中学生にとっても、学生にとっても意義のある機会になっています。これらの活動も全て、京町家がキャンパスになっているからこそ。

おくどさんのある通り庭。何とも京町家らしい風景を楽しめる

「単なるキャンパスではなく、学生が地域の人達との関わりの中で、ぐぐっと成長できる交流拠点であることが、この京町家の強みなんです。新型コロナウィルスの影響で従来のような活動ができない時期が続いたので、以前のように活動できるようにまた盛り上げていきたいです」と長谷川さん。学生が主体となって、様々なイベントが繰り広げられる深草町家キャンパスの今後がますます楽しみです。