京町家に移り住んできた生川さん

京町家に移り住んできた生川さん

現在では貴重な「台桧(たいひ)」が多く使われていました

生川邸は、表屋造の商家型京町家ではありません。専用通路の先、ちょっと奥まったところに、静かにたたずんでいます。京町家に住もうと物件を探しはじめ、最初に紹介をされた2 つの物件のうちの1 軒だったそうです。

約30 年もの間空き家だったそうで、荷物がたくさん詰まっていて埃・泥・カビだらけだったそうですが、構造・造りはしっかりしていて、建物の傾きもほぼなく、大切に使われてきた良い建物であると、町家大工の棟梁のお墨付きをいただいて、家族を説得することができたそうです。

改修のポイント

通り庭を活かしたキッチン・ダイニング

町家にとって庭は、内と外の空間をつなぐ大切な要素

所有者が何回か変わっていることもあり、敷地ぎりぎりに増築されている箇所などもあったため、基本的には減築、本来の姿に戻すことを意識して改修されています。
構造上の柱は残し、劣化している部分には確実な対策を施しながらも、古い姿に戻すことにこだわるのではなく、これまで受け継がれてきた建物の価値に配慮しながら、「この建物にとって今やるべき改修・今できる改修は今やっておく」ことで、この先の100 年持つように、次につなげることができるよう、改修に取り組まれています。通り庭部分はタイル貼りの土間のキッチンダイニングスペースとするなど、現在の暮らしの快適性、価値観にも配慮されています。

工夫された木製の断熱建具と床暖による寒さ対策、奥の様子が見え、光を取り込むことができる木格子耐力壁を使った耐震改修など、生川邸では、快適な京町家暮らしのために、様々な実験的な取組もされています。

町家の魅力

木格子耐力壁により耐震性を向上させています

建築士である生川さん自身が、住まいとして選ぶほど、京町家に魅力を感じておられるとのこと。4 月、5 月は最高に気持ちが良いのだそう。また、夏には建具替えをするなど、四季の移ろいを楽しむことができる豊かさも、京町家ならではのプラスの評価・魅力となっているようです。

京町家暮らしの心得

隙間を減らし、断熱性を高めた木製建具

町家についての考え方は、人それぞれ。保存にこだわる人も、暮らしに合わせて変えていく人も、正解も間違いもない。だからこそ家主は考えていかないといけない、また、自分たちにとってだけでなく、他の人やまちにどう影響するのかを考える必要がある、とおしゃっておられました。

「普請(ふしん)」という言葉は、元々「社会貢献する」という意味合いがあります。建物を建てたり、修繕したりする機会はまちに関わる機会でもあります。購入し所有はしているお住まいではありますが、建物の長い歴史のうえでは「借りもの」であり、次世代に受け継いでいくことを意識しておられました。